「マネジメントシステム」とは

一言で言うと、「組織を適切に指揮・管理する仕組み」のことです。「組織」とは2人以上の集まりのことを指し、会社に限らず、地方自治体や学校、病院なども含まれます。組織内の人々が同じ目標に向かって働くためには、「管理(マネジメント)」が必要不可欠です。そこで、そのためのルールを作り、それを皆で守ることによって、組織を運営していくことになります。このルールが、「規定」や「手順」です。

さらに、規定や手順を運用するためには、部課長などの職制が必要となり、各役職にはその「責任」と「権限」が明確になっている必要があります。規程や手順、そしてこれらを実際に運用するための責任・権限の体系が「マネジメントシステム」です。言い換えれば、マネジメントシステムとは、「目標を達成するために組織を適切に指揮・管理する仕組みのことである」といえます。「ISOマネジメントシステム規格」はこういった組織の仕組みに関する国際的な基準を示したものです。

マネジメントシステム規格の種類

マネジメントシステム規格としては、ISOが発行するISO 9001やISO 14001が最も有名で、広く普及しています。ISO 9001は、顧客に提供する製品・サービスの品質を継続的に向上させていくことを目的とした品質マネジメントシステムの規格です。また、ISO 14001は、サステナビリティ(持続可能性)の考えの下、環境リスクの低減および環境への貢献を目指す環境マネジメントシステムの規格です。

この2つ以外にも多数の規格が発行されています。例えば、ISO 27001は、組織が保有する情報に関わるさまざまなリスクを適切に管理するための情報セキュリティマネジメントシステムの規格です。他にも、ISO 22000(食品安全)やISO 45001(労働安全衛生)といった規格があります。

さらに、セクター規格と呼ばれる規格もあります。ISO 9001はどのような業界でも使用できる規格であり普遍的な内容にまとめられたものですが、それぞれの業界でより実践的に使用できるよう、ISO 9001をベースに業界固有の要素について追加要求事項を規定したものがセクター規格です。

マネジメントシステム認証制度の仕組み

ISO 9001などのISOマネジメントシステム規格には「要求事項」と呼ばれる基準が定められています。認証機関は、組織がこの基準を満たしているかを審査し、満たしていれば、組織に対して認証証明書(登録証)を発行するとともに、社会一般に公開します。利害関係のない認証機関が認証を与えることで、組織は社会的信頼を得ることができます。この一連の仕組みが「マネジメントシステム認証制度」です。

組織・企業

マネジメントシステムの構築

申請

認証

認証機関

マネジメントシステムの審査・認証

日本国内には約50社の認証機関がありますが、認証機関の信頼性を保証する仕組みとして、グローバルな「認定」の制度があります。日本には日本適合性認定協会(JAB)と情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)という2つの認定機関があり、JQAを含む認証機関はこれらの認定機関からお墨付き(認定)を得て認証を行っています。

また、日本だけではなく世界各国にも同様の認定制度があり、各国の認定機関が相互承認しています(IAF 国際相互承認)。そのため、IAFに加盟している認定機関から認定を受けた認証機関の認証は、国内外問わず通用します。

マネジメントシステム認証制度が普及した背景

1987年、「品質保証のモデル規格」としてISO 9001が発行され、これによりISOの認証制度が始まりました。現在190カ国以上でおよそ120万組織がISO 9001認証を取得しているといわれています。このように世界的に普及した背景には、次のような事情がありました。

産業革命以降、製造業にとっての最大の課題は、大量生産をいかに効率的にこなすかということでした。その中で製造現場を中心に品質管理や品質保証といった考え方が広がり、製品の不良率を下げ、コストを落とすための有益なツールとして、品質管理・品質保証という考え方が急速に普及します。やがてこういった取り組みを制度として整備する動きが生まれます。まず、英国が国家規格としての品質保証のモデルを作り、それを基にISOによって国際規格 ISO 9001が制定されました。

日本の企業にとっては、ISO 9001の認証を取得していると欧米に製品を輸出する際に相手の信頼を得られるというメリットがあり、多くの企業が認証を取得するようになりました。やがて日本の製品の品質が向上すると、単に輸出のためだけではなく、国内の顧客の信頼を得たり、社内における仕事の活性化を図ったりするためにも使われるようになりました。こうして、マネジメントシステム認証制度は社会的な仕組みとして定着していったのです。

認証取得の効果

認証取得の効果は大きく3つあります。

第三者の証明による社会的信頼の獲得

第三者の証明による社会的信頼の獲得です。「認証機関」という外部の第三者から証明(第三者認証)を得ることで、組織内外に対する説明責任を果たすことができ、それによって社会的信頼を得ることができます。

第三者の視点による問題点の発見

ISOマネジメントシステム規格には、組織を管理・運営するために必要となる「要求事項」が定められています。第三者である認証機関が「審査」する際、認証機関の審査員は、組織がその要求事項を満たしているか、満たしていないかをチェックしますが、そのときに、組織内だけでは気付かない問題点を外部の視点から発見し、組織が是正処置を取ることによって、マネジメントシステムを改善していくことができます。

定期的な審査による継続的改善

マネジメントシステム認証制度は一度認証を取得して終わりというものではなく、認証を維持するために毎年審査を受ける必要があります。それによって、顧客に提供する製品の品質を維持し(品質保証)、不良率を低下させる、顧客満足度を向上させる(品質改善)といった継続的な改善が可能となり、定期的な審査によって組織内部の緊張感を持続させる効果も期待できます。